受け手の姿勢

自分が望むお庭のイメージを伝えることは
大変難しい作業だと思います。
写真で伝えたり、言葉で伝えたり、いろんな手段が
ありますがそれでも大変だと思います。
特に、お庭に思い入れが強い方ほど
その困難を感じることがあるように思えます。


3年前にこのお庭の依頼をいただきました。
植物やお庭だけでなく、
美術や工芸、歴史、哲学といった分野にも
大変深い造詣をもったご夫婦でした。

いつも表現が哲学的で
「我々に似合うものは、力強い名石ではなく
むしろ、丹波の山に転がる雑石こそ
我々夫婦のラピュス(石)です。」

通路のイメージは?とお訊ねすると、

「山の小道。そこには古寺があり、
古寺の脇道に人が通ってできた道。
作られたようで作れれてないような。
しかし、詫びた世界観を求めているのではありません。
むしろ、西洋的自然観を大事にしたい」と。




打ち合わせのたびに、
旦那さんが挽いたコーヒーをいただきながら
歴史、哲学、美術、音楽など
さまざまな分野のお話をしてくださいました。

「最近凝っているのは星座でしてね。
家のベランダから夫婦で天体を見ながら
たのしんでいるんですよ。」とご夫婦で楽しそうに
お話されている様子は今でもよく思い出します。

お伺いするたびに、玄関にかけてある絵が
替わっていたり、季節に応じて花入れが
替わっていたり。

恐らくすべて私に対するメッセージだったのだと思います。
こんなお庭がほしい、なんて簡単に写真を見せて
伝えることができないご夫婦の頭の中にある
イメージをいろんな形で伝えようとしてくれていたように思います。
最終的にはそのご夫婦の「好き嫌い」なのかもしれませんが、
それはそんな簡単に言えるものではなく、
ご夫婦が人生の中で培った美意識の最終形。
それを私のような若造に
丁寧に伝えてくださってたように思います。




そこには受け手の努力と謙虚な姿勢が
求められるのだと思いました。